気候変動は、社会における喫緊の課題であるとともにネツレンにおいて経営課題であると認識しています。2050年度にはCO₂排出量実質ゼロを目標にしており、第15次中期経営計画では気候変動への取り組み強化を掲げ、全社横断的な委員会を設置しました。現状把握に務め、今後具体的な取り組みを進めていきます。

気候変動への対応

方針および推進体制

ネツレンでは、第15次中期経営計画において「CO₂削減を推進し、持続可能な社会づくりに貢献する」ことを目標に掲げています。気候変動を経営課題ととらえ、2021年4月にCO₂排出量削減専門委員会を、2022年4月より気候変動への取り組み推進を強化するため全社環境保全委員会を発足しました。取締役および執行役員がメンバーとなり、3ヵ月に1回開催しています。
全社環境保全委員会では、CO₂排出量削減に関する部門横断の4つの専門部会を立ち上げています。「設備部門」では、CO₂排出削減につながる設備の検討・開発を担当し、尼崎・神戸工場において太陽光発電システムを2022年度に導入予定です。「製造部門」では、工場における省エネ・高効率稼働の設備への更新および自社製品においても高効率設備の開発を行う予定です。「調達部門」では、再生可能エネルギー購入の検討、スコープ3(サプライチェーン上のCO₂排出量)の把握に努めると同時に、輸送時におけるCO₂排出削減に向けた取り組みを行っています。「営業部門」では、自社製品のCO₂削減貢献量を算定中です。今後は、各部門において現状把握後、具体的な取り組みを進めていきます。

CO₂排出量削減目標
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CO₂排出量削減目標
熱処理技術別CO₂排出量の比較
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熱処理技術別CO₂排出量の比較
全社環境保全委員会体制図
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全社環境保全委員会体制図

CO₂削減に向けた取り組み状況

無公害・省資源のダブル・エコ(W-Eco)のIH(誘導加熱)技術を事業の柱とするネツレンは、「省エネルギー」によるCO₂排出量削減に注力し、各工場・事業所が主体となり気候変動への対応を推進しています。
ネツレンの各事業所におけるエネルギー使用は、91%以上が購入電力によるものです。電気エネルギーを大量に使用する事業特性のため、工場ではあらゆる視点で省エネにつながる施策を中長期計画で実施しています。2021年度はエネルギー使用にかかる原単位が対前年度比96.7%となり、目標の1%改善は達成となりました。5年間平均原単位変化は100.7%となり未達となりました。
またネツレンは、土木・建築用の高強度鋼材製品を全国各地に納入しており、特定荷主(3,000万トンキロ/年以上)に指定されています。物流にともなう環境負荷の約95%がトラック輸送によるものです。積載率の改善、共同輸送(複数の納入先の混載)、中継倉庫の活用などを組織横断的に実施し2021年度は輸送エネルギー使用による原単位が対前年度比99.8%となり、目標の1%改善は未達となりました。5年間平均原単位変化も102.4%となり未達です。2022年度は、省エネ活動と物流改善を強化し、原単位対前年度比1%削減を目指していきます。

CO₂排出量とCO₂排出原単位(生産量当たり)の
推移(Scope1・2排出量)
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CO₂排出量とCO₂排出原単位(生産量当たり)の
推移(Scope1・2排出量)
電力使用量と原単位対前年度比率の推移
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電力使用量と原単位対前年度比率の推移

社内浸透の取り組み

気候変動対策への理解と浸透を図るため、社内において環境教育を開催予定です。2022年4月に開催した事前の説明会では、製造部門各工場から2名ずつ約70名が参加しました。各工場の省エネ委員会と連携し、今後勉強会を開催していきます。
2022年度は、階層別研修(リーダー・課長補佐・新任管理職計71名)で環境について、教育を実施します。

環境マネジメント

企業活動や社会の持続可能な発展は、健全な地球環境の上にこそ成り立つものです。ネツレンはCSR基本方針に基づき、環境保護を自社の社会的使命と認識し、CO₂排出削減、資源の保全、汚染防止に努めるとともに、新技術による環境負荷の低減をかなえる新技術・新製品の開発を追求し、地球環境との共生を図っていきます。
環境保全への体系的な取り組みを行うため、環境担当役員を委員長とする全社環境保全委員会を設置しています。全社環境保全委員会には省エネルギー委員会と物流改善委員会の専門委員会が組織され、省エネ活動と物流改善を推進しています。
各事業所での活動は、環境保全委員会のメンバーを中心とする事業所環境保全委員会を設置し、事業所ごとの環境保全活動を推進しています。
また、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001の認証を取得し、製品およびサービスの環境負荷の低減を積極的に推進しています。国内グループ会社でも認証取得を進め、環境活動の範囲を広げており、全工場での認証取得を推進しています。

環境マネジメントシステム体制図
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環境マネジメントシステム体制図
  • 総物質投入量、総生産量には受託加工品をふくみます。
  • 化学物質排出・移動量は第一種指定化学物質については1t以上、特定第一種指定化学物質については0.5t以上の取り扱い物質のみ集計しました。
  • 排水量を計測していない事業所は水資源投入量を排水量としました。

マテリアルフロー

水・資源・廃棄物削減の取り組み

循環型社会の構築に貢献し、限りある資源を大切に、廃棄物削減とリサイクル、環境汚染の防止への取り組みを推進しています。廃棄物の分別徹底や、回収・処理業者による適切な処理を確認し、廃棄物の削減やリサイクル化の推進をネツレンの基本方針としています。産業廃棄物管理規程や廃棄物分別収集作業管理標準等の規程を定め、各工場・事業所にて取り組んでいます。
また、ネツレンの各工場・事業所における水の主な用途は、熱処理時の鋼材・製造設備の機器の冷却、鋼材の表面洗浄です。水資源の有効利用のため各種施策を実施しています。主に、冷却等で使用した水を循環させ、地下水の揚水量や工業用水の使用量の削減に努めています。
さらに、高周波焼入れの工程では、急激な冷却による焼割れの防止のため、冷却緩和剤を混ぜた焼入液を使用しています。この冷却緩和剤はクローズドシステムで使用しているため、土壌への汚染はありませんが、冷却水漏えいの事態発生を想定し、緊急事態対応手順を文書化するとともに、年に1回所定の教育訓練を行い、土壌汚染や公共水域の汚染防止に努めています。

化学物質の適正管理

ネツレンでは、製品生産時に使用する化学物質取扱量と排出量および移動量を工場ごとに集計・管理しています。当社は、PRTR制度における対象化学物質の取扱量が既定以下のため届け出の対象外ですが、使用量にかかわらず適正な管理を行い、地球環境の破壊や人の健康に害をおよぼす危険を最小化し、人と地球にやさしいものづくりを目指します。

環境貢献製品・技術事例 ―SiC素子を用いたMK31-Fの開発―

大容量パワー半導体「SiC-MOSFET」(SiC素子)とFPGAデジタル基板を使用した高周波電源装置を開発しました。高周波電源装置は自動車部品や建機部品などの焼入れ・焼戻しを行う誘導加熱装置に組み込まれ、商用周波電力を高周波電力に変換し、誘導加熱コイルへ供給します。
本装置は従来のパワー半導体「Si-MOSFET」(Si素子)と比較して高耐圧のSiC素子を用い、電源電圧を高電圧化することで構成部品と損失を削減し、小型軽量化(従来比:体積20%・質量30%減)を実現しました。さらにSiC素子の特徴であるオン・オフ高速動作と低いオン抵抗により素子自体の損失も減少し、電源全体の総合効率はSi電源と比較して5%、真空管式電源装置と比較すると約30%の効率アップが見込めます。
省スペース・省エネを実現し、環境にやさしいIH技術で持続可能な社会の実現に貢献します。

新型トランジスタインバータ MK31-F
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新型トランジスタインバータ MK31-F